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ノーモア・ミナマタ第2次新潟訴訟・第1回弁論期日

  • 2014.05.28
    ノーモア・ミナマタ第2次新潟訴訟の第1回弁論期日に,当弁護団の中島潤史弁護士が参加してきました。
    上記訴訟は,昨年12月11日,新潟水俣病阿賀野患者会の22名が第1陣原告となって,新潟水俣病の損害賠償を求めて,昭和電工と国を相手に,新潟地裁に提訴したものです(「ノーモア・ミナマタ第2次新潟全被害者救済訴訟」)。

    (期日前の様子)



    (期日終了後の報告集会の様子)



    中島潤史弁護士が裁判所で意見陳述をしました。
    意見陳述の内容は次のとおりです。

    【意見陳述】

    私は,熊本地裁に係属中のノーモア・ミナマタ第2次訴訟の弁護団を兼ねています。ここでは,熊本の水俣病被害者が新たに訴訟を提起した背景と,水俣病問題の解決のために求められていることについて意見を述べます。
    1 水俣病は終わっていない
    2013(平成25)年6月20日,水俣病被害者48名が,国,熊本県,チッソを被告とする損害賠償請求訴訟を熊本地方裁判所に提起しました。その後3度の追加提訴を行い,現在では合計430名の原告団となっています。今でも提訴希望者は後を絶たない状況で,年内にも1000名を大きく超える原告団になると考えています。
    熊本水俣病の公式確認から58年もの年月が経過した今でも,補償を受けていない水俣病被害者がたくさんいるのです。
    2 多くの未救済被害者が残されている理由は何か
    では,なぜこれほど多くの未救済被害者が残されているのでしょうか。
    (1) 公健法上の認定制度による切り捨て
    その大きな原因の1つは,公健法上の認定制度が被害者切り捨てに使われてきた点にあります。
    国は,水俣病の判断条件として,感覚障害に加えて運動失調や視野狭窄などの組合せを要求したため(昭和52年判断条件),多くの申請者が認定されませんでした。
    2013(平成25)年4月の最高裁判決が,感覚障害だけの者も水俣病と認定できるとしたことを受けて,環境省は今年3月に認定基準の運用に関する指針を通知しました。しかし,その内容は症候の組合せを要求する昭和52年判断条件を補足しただけであり,被害者切り捨ての方針を転換するものではありませんでした。
    (2) 水俣病特措法の救済措置による切り捨て
    水俣病特措法の救済措置は,当時のノーモア・ミナマタ第1次訴訟における基本合意において,対象者の判定を行政ではなく第三者委員会が行い,その判断資料として民間診断書を公的診断書と対等に扱うとされた成果をモデルとしたものです。その点では被害者救済を前進させる面がありました。しかし,他方で被害者の切り捨てが行われたのです。
    例えば,行政は,居住歴の証明方法として半世紀も前の住民票や戸籍附票などを「客観的資料」として要求し,提出できない者を「非該当」とするケースがありました。また,行政の指定した医師による検査では,皮膚が出血するほど強く爪楊枝で刺されたりするなど,ずさんな検査のために感覚障害の所見がとられなかったケースがありました。現在の原告の約3割は,このように実際には救済対象地域内での居住歴がありながら,曝露要件や症候要件で切り捨てられた被害者です。
    さらに,救済対象地域に居住歴のない被害者に至っては,水俣湾周辺の魚介類を多食したことの「客観的証明」が求められ,それができない者の多くが切り捨てられました。現在の原告の約6割は,このような対象地域外であるとして切り捨てられた被害者です。
    そして,水俣病特措法の申請期限である2012(平成24)年7月末日に申請が間に合わなかった被害者もいます。現在の原告の約1割がこのような被害者ですが,今後もっと増えていくと思います。
    3 水俣病問題の解決のためにいま何が求められているか
    いま私たちが直面している課題は,以上のような未救済被害者に対する補償をどのように実現するかという点にあります。
    私たちは,もはや誰が水俣病被害者であるかを加害者たる行政に判断させることはできない,司法による解決を図るしかないと考えています。
    もっとも,水俣病被害者の適切な救済内容としては,それが治癒し難い健康障害であることからすれば,裁判で求める一時金だけでなく,医療費と療養手当が将来にわたって継続的に支給される必要があります。
    このような補償を早期に実現するためには,司法による解決の中でも,判決以外の方式で解決を図ることが求められます。それが可能なのは「和解」手続しかありません。
    すなわち,訴えを提起した原告は,水俣病被害者であることを証明する診断書などの一定の資料を提出します。裁判所は,あらかじめ当事者間で合意された判断方法に従って審査をし,水俣病としての救済対象者と認めた場合,原告・被告ら双方に和解の勧告をします。双方がこれを受け入れれば和解成立となり,必要な救済を受けられるようにします。
    これが原告団の求めている司法救済制度というものです。
    このような司法救済制度が機能するためには,①救済対象者の要件,②提出すべき資料の種類,③補償の内容等のルールが予め決められている必要があります。これは,これまでの司法判断等に基づいて当事者間で合意することが十分に可能なものです。当事者間で協議の整わない部分があっても,裁判所が公平な立場から所見を示すことで,合意形成が可能です。
    そして,このような司法救済制度は,将来水俣病被害者として訴え出た者も活用できるように恒久的な制度とする必要があります。
    新潟水俣病の問題も含めて,水俣病問題の解決のためにいま求められているのは,このような司法救済制度の確立なのです。
    裁判所におかれましては,本件訴訟の持つ意義を十分に踏まえた上で,水俣病問題の全面解決に向けた訴訟指揮を,ぜひともしていただきたいと思います。

水俣病不知火患者会